CIA、MIT6、KGB、警視庁公安部。この4つに共通するもの、皆さん分かるでしょうか?これらは各国が誇る情報機関であり、それぞれに敵国や競争相手の内部に侵入して秘密情報を得るスペシャリスト、いわゆるスパイと呼ばれる人達がいます。
海外にはスパイを題材にした映画が数多くあります。
私がパッと頭に浮かんだのは『ミッション・インポッシブル』、『007』などのアクション満載のものですが、その他にもコメディ要素に溢れた作品、現実の諜報活動に類似したシリアスなものなど、様々あります。
ここでは、3つのカテゴリーに絞っておすすめのスパイ映画を紹介していきます。
アクションが最高なスパイ映画!
ミッション:インポッシブル/ローグネイション
トム・クルーズ演じるIMF所属のスーパースパイ、イーサン・ハントが危険なミッションに立ち向かう『ミッション・インポッシブルシリーズ』の第5弾。
無国籍スパイ組織「シンジケート」に立ち向かうというストーリーです。
主演のトム・クルーズはスタントマンをほぼ使わずに自ら危険なアクションに挑むことで有名です。
1番の見どころは、なんと冒頭のシーン!離陸する飛行機にしがみつき、実際に高度1500メートルまで飛んでいるトム。スタントなし、CGほぼなしというから驚きです。
スリルを味わいたい人、トム・クルーズのようにカッコいい大人になりたい人におすすめの1本です。
キングスマン
『英国王のスピーチ』のコリン・ファース演じるハリー・コートが主役のお話です。表の顔は高級テーラー「キングスマン」で働く仕立職人。ところが、「キングスマン」は実は秘密裏に活動する国際的な独立諜報機関であり、ハリーはその組織のエージェントでもありました。「キングスマン」の新人試験を受ける候補生の奮闘の物語と、人類抹殺計画を企てるヴァレンタインの陰謀を阻止する物語が並行して描かれています。
監督は『キックアス』のマシュー・ヴォーン、ヴァレンタイン役にサミュエル・L・ジャクソン。
暴力描写が少々過激でR15+作品ではありますが、コリン・ファース、サミュエル・L・ジャクソンの鬼気迫る演技と練られたストーリーが最高です。
アクションだけでなく、俳優の演技やストーリーなど全てにおいて質が高く、スパイ映画初心者におすすめの作品です。
アトミック・ブロンド
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のシャーリーズ・セロンが主演を務める本格アクション映画です。
舞台は1989年、東西冷戦末期のベルリン。シャーリーズ・セロンが演じるのはイギリス秘密情報部MI6の女性エージェント、ロレーン・ブロートン。
盗まれた極秘情報リストを、ベルリンに潜入中の男性捜査官と奪還するというスパイ映画の教科書のような作品です。
シャーリーズ・セロンがセクシーかつカッコいいです。ハードなトレーニングを積んで撮影に臨んだ彼女のストイックさが、アクションシーンに滲み出ています。
また、80年代を連想させる重厚な音楽も、本作の魅力をよりいっそう引き立たせています。
音楽好き、シャーリーズ・セロンのファンの方に是非とも鑑賞していただきたいです。
カジノ・ロワイヤル
おなじみ『007』シリーズ。
暗殺の仕事を2度成功させたジェームズ・ボンドが”00(ダブルオー)”の地位に昇格し、最初の任務に挑む様を描いています。
シリーズ第21弾作品ではありますが、今までのシリーズとは時系列が異なっており、新しい『007』の始まりといえます。
6代目ボンドを、ダニエル・クレイグ、ヒロインのボンドガールをエヴァ・グリーンが演じています。
シリーズ初の金髪ボンドの登場に、当初は批判の声も聞こえましたが、今ではダニエル・クレイグこそ真のジェームズ・ボンドであると賞賛の嵐を受けています。
過去の『007』シリーズを知らない方にもおすすめです。
シュリ
1999年に公開された韓国映画。
本国で『タイタニック』の観客動員数の記録を更新し、日本でも大ヒットした作品です。
韓国情報機関””OP””の情報部室長ユ・ジュンウォンが北朝鮮の女性工作員イ・バンヒをある事件の重要参考人として捜していました。その工作員の正体は身近な人物であった、、、というベタなラブストーリーの側面もありつつ、北の工作員と南の諜報部隊との激しいアクションシーンも盛り沢山で、観客を楽しませるサービス精神に溢れた良作です。
恋人と一緒に鑑賞すると、より感情移入できるかもしれません。
ボーン・アイデンティティー
『ボーン・アイデンティティー』シリーズの第1作目。
マッド・デイモンが演じるのは、記憶を失った謎の男。マルセイユ沖で漂っていた彼は航海中の漁船の船員に助けられますが、この時点で既に過去の記憶がありません。唯一の手がかりは、自らの皮膚の下に埋め込まれていたマイクロカプセルのみ。そこにはスイスの銀行の口座番号が記されていました。
男は、スイスに向かい貸金庫の中身を開けると、いくつものパスポート、現金、銃があり、1冊のパスポートから自分の正体が”ジェイソン・ボーン”であることが判明します。襲い掛かる危機を乗り越えながら自分の”アイデンティティー”を取り戻していく、スリル満点のストーリーとなっています。
見どころはたくさんありますが、個人的にはカーチェイスのシーンが大好きです。パリの街中を前時代のオンボロミニ・クーパーが駆け抜けるシーンは、車好きにはたまりません。
全体的に暗い印象で派手さもない今作ですが、その作風がマッド・デイモンの無骨な感じと実にマッチしていて素晴らしいです。
重厚な作りのアクション映画を堪能したい方におすすめしたい良作です。
とにかく笑える!スパイ映画・コメディ編
SPY/スパイ
ジェイソン・ステイサムとジュード・ロウが共演を果たした作品です。
ジュード・ロウ扮するCIAエージェントのファイン、彼とパートナーを組んでいた内勤捜査官のスーザンがこのストーリーの主人公です。ある事件がきっかけで、スーザンは現場捜査官になり・・・。
・・・といった細かい説明は邪魔でしかありません。とにかくプレーヤーの再生ボタンを今すぐに押すことをおすすめします。
何も考えずにただひたすらに笑いましょう。日々の生活に疲れきっている方、必見です!観終わった後、今まで抱えていた悩みなんてどうでもよくなってしまいます。最高のエンタメ映画です。(下ネタが苦手な方はご視聴を避けることを推奨します。)
ゲット・スマート
1965年から計5シーズン放送されたTVドラマを現代風にアレンジ、スケールアップさせた同作。
アメリカのスパイ機関『コントロール』に在籍する主人公のスマート。分析官として優秀過ぎるが故に、希望するエージェントに転属できないでいました。
ある事件がきっかけで、スマートはエージェントに抜擢され、エージェント99という女性エージェントとコンビを組みミッションに取り組んでいきます。
ギャグが要所要所に散りばめられたコメディ色の強い作品です。良い意味で肩の力を抜いて観られる映画です。日本でも有名なマシオカも出演しています。
見どころは、なんといってもアン・ハサウェイ。『プラダを着た悪魔』で彼女に目を奪われた男性も多いことでしょう。アン・ハサウェイのファンならば必ず観るべき一作といえます。
スパイキッズ
父母が悪の組織に捕まり、その後初めて、両親がかつて凄腕のスパイであったことを知る姉と弟。2人は悪の組織の陰謀を阻み両親を救い出すために、自らスパイになる、といったストーリーです。
あらすじを読むだけで、この作品は相当ぶっ飛んだ内容だということは想像していただけたでしょうか。ただし、その想像の3倍はぶっ飛んだ内容になっています。
チープな設定が、逆に笑いのボルテージを高めてくれます。家族みんなで安心して鑑賞できるエンタメ作品となっています。
人生を見つめ直すきっかけに?スパイ映画・シリアス編
ブリッジ・オブ・スパイ
第88回アカデミー賞において作品賞を含む6部門にノミネートされ、映画批評家からの評価も高い本作。
スティーヴン・スピルバーグ監督、4つのオスカーを獲得したコーエン兄弟が実話を基にして脚本を手掛けたスパイ映画です。ただし、これまでに紹介してきたアクションがメインのスパイものではなく、人間の内面を描いたヒューマンドラマの要素が濃い作品に仕上がっています。
緊張状態にあった米ソ冷戦時代、トム・ハンクス扮する弁護士ジェームズ・ドノヴァンがソ連のスパイの弁護を引き受け死刑を回避させます。その数年後、ソ連に捕らえられたアメリカのスパイと自分が弁護したソ連のスパイの交換という任を受けるドノヴァン。失敗すれば戦争勃発の引き金を引くに等しい状況で、双方を救おうともがく姿に心うたれます。
人間関係に悩む全ての人に是非おすすめしたい至極の1本です。
インファナル・アフェア
欧米作品が多いスパイ映画ですが、こちらアジアは香港のクライムサスペンスの代表作の1つです。
マフィアの組員ラウは警察へ、警察官の卵であるヤンはマフィアへと、それぞれ潜入を命じられます。それから10年が経ち、ヤンは麻薬取引の情報を警察に流しますが、もちろんラウによって警察の動きもマフィアに筒抜けです。お互いの企みが失敗に終わることで、警察とマフィア双方がスパイの存在に気づいてしまいます。
ラウとヤンの心理的葛藤を、アンディ・ラウ、トニー・レオンが見事に表現しています。
インファナル・アフェアは全3作あり、日本でも香川照之と西島秀俊によってリメイクされているので、両作を比較したり色々な楽しみ方ができます。
GWなどの連休は、お出かけするのも良いですが、エアコンの効いた部屋でインファナル・アフェアシリーズを制覇してみてはいかがでしょうか?
レッド・スパロー
ケガを負いバレリーナとしての将来を断たれたドミニカ・エゴロワ。病気の母親の治療費を工面するため、ロシア諜報機関のスパイとなることを決意します。その後、ドミニカはスパイに必要な技術を学び、ロシア情報庁の上層部に潜む、アメリカとの内通者をあぶり出すために動きます。
主役のドミニカ役には、アカデミー賞主演女優賞を獲得したジェニファー・ローレンス。実力派若手女優の体当たりの演技に注目です。
“スパロー”とはハニートラップを仕掛ける女性スパイを意味する隠語ですが、原作の著者はCIAに長年勤務していた経験があり、この物語で描かれている内容は現実世界と大きく乖離したものではありません。
ビジネス社会における女性の在り方、権利を今一度見つめ直さなければならない、そんな問題を提起する作品ではないでしょうか。
寒い国から帰ってきたスパイ
スパイ小説を中心に作品を発表しているジョン・ル・カレの同名小説を映像化した作品です。日本では1966年に公開されました。
イギリス情報部に所属するリーマスは、密命を受けて東ドイツへ潜入します。その指令とは、東ドイツの諜報機関の実力者であるムントを失脚させること。任務は成功したかのようにみえたのですが、最後の最後にどんでん返しが・・・。
信頼していた人に裏切られたり、信じていたものが土台ごと崩れたとき、あなたはどのような行動をとりますか?この作品は、所詮自分は社会の歯車の1つであるという現実を突きつける一方で、小さな歯車としてどう足掻いて生きていくかが重要であるということを教えてくれます。働く全ての人に観ていただきたい名作です。
ラスト、コーション
舞台は日本占領下の上海。
抗日運動を弾圧する特務機関員の男を暗殺しようとする女性スパイの葛藤を描いた物語です。
女性スパイは男の懐に潜り込むことに成功しましたが、特務機関員という立場に苦悩する男に徐々に惹かれていきます。胸が苦しくなるほどの結末を迎えます。
主役のトニー・レオンを誘惑するヒロインを熱演したのは、オーディションで約1万人の中から選ばれた、タン・ウェイ。
この作品はヴェネツィア国際映画祭でグランプリにあたる金獅子賞を獲得しました。
過激な性描写があるため15歳未満の方は視聴できませんが、恋愛に興味を持つ10代にこそ観てほしい映画です。本作を観るたびに、真に人を愛するためには大きな自己犠牲が必要なのではないか、と考えさせられます。
グッド・シェパード
ロバート・デ・ニーロが、監督、製作、出演の3役を担当し、主役の諜報部員役をマッド・デイモン、その妻をアンジェリーナ・ジョリーが演じています。
言わずと知れたアメリカの諜報機関、CIAの成り立ちの歴史、冷戦、キューバ危機の時代を描く本作。
キューバのカストロ政権転覆を狙ったCIAでしたが、CIA内部からの情報漏洩により計画は失敗します。マッドデイモン扮する諜報部員は、裏切り者であると疑われてしまいますが、実は意外な人物が情報漏洩に加担していました。
職務上、秘密を明かすことが出来ない男の苦悩、そんな夫への不満を募らせる妻。国家をとるか、家庭をとるか、そんな主人公の葛藤が見事に表現されています。
一般のサラリーマンの方にも似たような経験があるのではないでしょうか?仕事の悩みを家族に相談出来れば良いのですが、職務上愚痴をこぼすわけにもいかない。自分と主人公を重ね合わせて鑑賞することで、色々なことに気付けるかもしれません。
汚名
父親に、ドイツのスパイであるという容疑がかけられた娘のアリシア。売国奴の娘として非難を浴び苦しんでいた彼女を救ったのが、デブリンという男でした。しかし、彼の正体はFBI捜査官であり、アリシアに近づいた目的は、ナチの残党へスパイとして潜入し情報を得るためだった、という切なく悲しい物語です。
監督は、あのアルフレッド・ヒッチコック。
撮影当時の映画製作のルールに「キスシーンは3まで」というものがありました。彼は、これを逆手に取り「3秒以内のキスを繰り返して2分半のシーンを撮影する」手法を取りいれ、当時の厳しい検閲をクリアしました。
サスペンス映画の神様とも称され、現代の映画界に多大な影響を与えたヒッチコックの演出を堪能したい方、是非ご覧になってください。
裏切りのサーカス
元MI6のスパイであるジョン・ルカレの人気小説を映像化した作品です。
イギリス諜報部「サーカス」の中枢に潜り込んでいるソ連の二重スパイをあぶり出し始末する。
シンプルな設定なのですが、この映画を十分に理解して楽しむためには、複数回鑑賞することをおすすめします。
登場人物が大変多く、また時系列もバラバラに描かれており、ストーリーを咀嚼するまでにかなりの時間を要します。覚悟して鑑賞に臨むことをおすすめします。
難解な映画なのですが、俳優陣の渋い演技が光っています。ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、トム・ハーディといった、実力派俳優同士の真剣勝負が観たいという方は必見です。
おすすめのスパイ映画のまとめ
スパイ映画というと、派手なアクションばかりが注目されがちなのですが、こうやってみると実に様々な視点から描かれている作品が多いことが分かります。
特に、スパイ映画における加害者と被害者の心の機微や葛藤を巧みに表現し、スパイというフィルターを通して、人間とは何であるかを訴えている作品が多数存在します。
生きることは他者と関わることであり、全ては人間関係だと私は考えます。人間関係に疲れたとき、人間関係で悩んだとき、スパイ映画が答えのヒントを教えてくれるかもしれません。
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